ペースメーカ装着患者の看護|適応疾患

ペースメーカとは


ペースメーカとは、正常に働かなくなった心臓の刺激伝導系を周期的に人工的な電位を直接心臓に与えて、収縮リズムを助ける働きをする治療のことです。
今回は、ペースメーカの適応となる疾患に注目して解説を行っていきます。

 

適応


ペースメーカの適応となるのは、

  • 薬剤性などの可逆的な要因がなく、徐脈性不整脈があり、失神、めまい、息切れやむくみなどの症状を認める場合

になります。

 

▶適応疾患

適応となる疾患は、以下のものです。

1.房室ブロック:心房-心室間の伝導障害による徐脈
2.洞機能不全症候群(SSS:sick sinus syndrome):洞結節の機能障害による徐脈
3.徐脈性心房細動:心房細動+徐脈

 

適応疾患と説明しましたが、上記の疾患でも全ての方がペースメーカの適応となるわけではありません。
疾患の詳細を解説していきます。

 

 

1.房室ブロック 
房室ブロックは、加齢や疾患などが原因で、洞結節からの電気刺激を、房室結節がその先に正常に伝えることが出来なくなった状態です。房室結節がどの程度、電気刺激を伝える機能があるかによって、程度分類がされています。

 

・Ⅰ度房室ブロック:

房室結節での刺激伝導は、完全には途絶しておらず、伝わるまでに時間がかかるようになってしまった状態です。実際には、房室結節で刺激伝導の途絶は起こっていないため、房室結節の機能が落ち、刺激が伝導する時間が遅くなっている状態です。

そのため心電図上、心房の収縮を表すP波と、心室の収縮を表すQRS波の出現までの間隔が長くなります。
基本的に心房から心室に血液を送り出す心周期に異常は来しませんので、血行動態破綻はないため、ペースメーカの適応とはなりません。

心電図上の変化:
PQ時間の延長>0.2秒(1マス以上)
P波:QRS波=1:1

 

・Ⅱ度房室ブロック

Ⅱ度房室ブロックは、心房の刺激の一部が心室に伝わらない状態です。Ⅱ度房室ブロックには、2種類あり、ウェンケバッハ型とモビッツⅡ型になります。

ウェンケバッハ(Wenckbach)型:

ウェンケバッハ型は、房室結節が非常に疲れやすい状態とイメージしてください。初めのうちは、房室結節も元気があり、正常に刺激が伝わっていますが、疲れてくると刺激を伝える時間がかかるようになり、遂には疲れて刺激を伝えられなくなってしまいます。房室結節は1拍休み、リフレッシュしたため、その後は刺激を伝えられるようになりますが、また徐々に疲れてくると、1拍休むという周期を繰り返すこととなります。そのため、心電図上の変化としては、PQ間隔が徐々に延長し、次第にQRSが1拍脱落した波形を繰り返す心電図波形が見られます。

QRSの脱落の時には正常な心周期が維持できませんが、休憩さえしてしまえば、心周期を維持できるので、基本的にはペースメーカの適応とはなりません。

心電図:
PQ時間が徐々に延長
周期的なQRS波の欠落


 

モビッツ(Mobitz)Ⅱ型:

モビッツⅡ型は、ヒス束以下の伝導の不良により、刺激が突然途絶えてしまう状態です。ウェンケバッハ型障害は房室結節内にあるため、PQ時間が徐々に延長し、QRS波の欠落するのに対して、モビッツⅡ型は、ヒス束以下に障害があり、突然心房の刺激が心室に伝わらなくなるため、P波の間隔は一定なのに、突然QRS波が欠落します。
いつブロックが起こるか予測不可能で、ブロックが増えてくると血行動態を維持できなくなるため、多くの場合、ペースメーカの適応となります。

心電図:
PP間隔の一定
突然のQRS波の欠落

 

・高度房室ブロック

高度房室ブロックは、モビッツⅡ型同様に、ヒス束以下の伝導の障害を来しており、P波とQRS波の繋がりが3:1以下に低下した状態のことです。完全房室ブロック(心房の刺激が完全に心室に伝わらない状態)の一歩手間の状態です。心室には、自動能という働きがあり、心房の刺激が心室に正常に伝わらず、心拍が得られないときに、自力で心室が興奮を起こす、緊急時の機能があります。高度房室ブロックにより、心房の刺激が心室に伝わらない場合、心室は自動能を働かせて、何とか血行動態を維持しようとします。しかし、心室の自動能だけでは正常な血行動態を維持することはできないため、ペースメーカの適応となります。

心電図:
P波とQRS波の繋がりが3:1以下

・Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)

房室結節からの刺激が完全に途絶してしまい、心房からの刺激が心室に全く伝わらなくなった状態です。高度房室ブロックの時と同様に、心室は血行動態を維持しようと、自動能を働かせます。心房の興奮も心室に伝わらないだけで、刺激は出ている状態です。
心電図としては、心房と心室が完全に非同期で動いているのため、P‐P間隔は一定で、R-R間隔も一定ですが、P波とQRS波の繋がりがなく、正常な新周期が維持できないため、血行動態が維持できない状態です。そのため、ペースメーカの適応となります。

心電図:
PP間隔は一定
RR間隔も一定
PR間隔は不規則

 

 

 

 

 

2.洞機能不全症候群(SSS:sick sinus syndrome)

洞機能不全症候群は、洞結節の機能障害により徐脈が生じる状態です。分類には、Rubenstein分類(ルーベンシュタイン分類)が用いられます。

 

・Rubenstein分類(ルーベンシュタイン分類)

Ⅰ群:原因不明の心拍数50回/分以下の持続性徐脈

Ⅱ群:洞停止または、洞房ブロック

Ⅲ群:徐脈頻脈症候群

 

・Ⅰ群:原因不明の心拍数50回/分以下の持続性徐脈

心拍数が50回/分以下の持続する徐脈がⅠ群に分類されます。某結節に異常はないので、P波とQRSの繋がりはしっかりとあることがわかります。
心周期も維持されるので血行動態の破綻はほとんどなく、ペースメーカ適応とはならない場合が多いですが、徐脈による症状が出現している場合には、ペースメーカの適応となります。

心電図:
・P波とQRS波の繋がりは維持
・心拍数50回/分以下

 

・Ⅱ群:洞停止または、洞房ブロック

 ・洞停止:心房の興奮が突然停止する(3秒以上P波が見られない:PP間隔の延長)

洞停止はその名の通り、洞結節が停止してしまっている状態です。洞結節からの刺激が出ず、次にいつ洞結節が刺激を出すのかはわからない状態です。
基本的に3秒以上P波が見られない状態を、洞停止とされます。

血液を送り出せない時間が長くなるため、ペースメーカーの適応となります。

心電図:
・P波の3秒以上見られない(PP間隔の延長)

 ・洞房ブロック:(洞結節ー心房間のブロック)

洞房ブロックは、洞結節と心房間がブロックされているものです。洞結節からの刺激は出ているのですが、心房に伝わらない状態のため、心房が興奮できない状態にあります。

ただし洞結節から房室結節までの間がブロックされているので、心房の興奮ができない状態と考えることができます。
心電図上の変化としては、PP間隔が整数倍延長します。(2回ブロックされれば、PP間隔は3倍。3回ブロックされれば、PP間隔は4倍に延長)
自覚症状がある場合には、ペースメーカの適応となります。

心電図:
・PP間隔の整数倍の延長

 

 

 

※洞停止と洞房ブロックの違い

心電図上、『洞停止』と『洞房ブロック』は間違えやすいですが、洞房ブロックでは、洞結節からの刺激は一定に出ている状態でしたので、P波もしくはR波の間隔は規則正しい整数の倍数となり、

それに対し、洞停止では洞結節からの刺激自体が出ていないため、P波はなく、つぎにいつ出るのかわからないことが多いので、P波もしくはR波の間隔が整数倍とならない、P波と繋がらないQRS波が見られる(補充調律)という部分の違いで判別することが出来ます。

 

・Ⅲ群:徐脈頻脈症候群

徐脈頻脈症候群は、心房細動などの頻脈性不整脈停止直後に起こる心房の停止による徐脈を繰り返す状態のことです。失神などの症状がみられる場合には、ペースメーカの適応となります。

 

心電図:
・頻脈(心房細動など)と徐脈を繰り返す

3.徐脈性心房細動 

通常脈が速くなる心房細動とは異なり、徐脈性心房細動とは、あまりに多い心房での興奮が心室に伝わらず、結果的に徐脈となる状態です。心電図上では、P波はなく基線が揺れ(f波)、RR間隔が不整でありかつ、50回以下の徐脈となります。
失神、痙攣、眼前暗黒感、めまいなどの症状または心不全症状があり、それが徐脈もしくは、心室停止によるものならペースメーカの適応となります。

心電図:
・P波がない
・基線の揺れ(f波)
・RR間隔の不整(完全房室ブロックを併発し、心室が補充調律となるとRR間隔は規則的になる)

 

今回は、ペースメーカの適応となる疾患に関して解説をさせて頂きました。

次回は、ペースメーカの設定に関して解説していきます。

 

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