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看護師のキャリアシリーズ ~大学教授に聞きました その壱~

看護師のキャリアパスについて、臨床から離れ研究職に就かれた方や、資格を取得し仕事に活かされている方などにお話をお聞き、看護師のキャリアパスシリーズとして、紹介させていただきます。

前回までは、専門看護師さんにお話しを頂き、専門看護師になるには?なったらどのようなことができるのか?といったような疑問にお答えいただきました。

 

お話をまだお読みになられていな方は、是非、下記のリンクからどうぞ。

 ☞『看護師のキャリアシリーズ ~専門看護師に聞きました その壱~』
 ☞『看護師のキャリアシリーズ ~専門看護師に聞きました その弐~』
 ☞『看護師のキャリアシリーズ ~専門看護師に聞きました その参~』
 ☞『看護師のキャリアシリーズ ~専門看護師に聞きました その四~』

 

今回からは、看護師のキャリアパスシリーズの第2弾として、研究職の大学教授に看護学校の教員にまつわるお話をお伺いしました。

 


 

目次
 研究職になるまで
  ~研究職になるまでのプロセス~
  ~大学院の費用や授業の時間はどのようなものか?~
  ~大学院を目指すにあたり必要なスキル~
  

研究職として、大学に勤務される方にお話を伺いました。

今回は、研究職となるまでのプロセスや、費用などについてお答えいただきました。

 

 

 ~研究職になるまでのプロセス~『教員の場合は臨床経験自体は数年でも』

-どのようなプロセス辿り、研究職になりましたか?

教授:研究職になるための要件は大学院卒であることくらいなのですが、きっかけは色んな人との『ご縁』です。

私は前の職業も特殊で、大学病院で情報管理担当の看護師をしていました。

そのときに、今の日本看護協会の会長さんが上司だったのですが、そのような色々なご縁の中でお誘いがありました。

もちろん選考はあるので面接試験などはしますが、人との縁でそういった仕事に就く方が多いとは思います。

-研究職なりたいと思ってなることも可能だけれども、ネットワークなども含めて、ご縁もないと難しいということですか?

教授:マッチングにその縁が生きてくるのではないかと思っています。

近年は逆に、選考をする側の仕事をすることもありますが、『コネプッシュ』だから強いかというと必ずしもそうではないこともあります。

やりたい仕事と実態が噛み合うかどうかも、距離が近い人と話をしながら入っていくほうがミスマッチは少ないと思うので、そのためにいろいろネットワークを張り、友達を増やしておいたりすることが研究職になった後にも生きてくるので、すごく大事な要素だと個人的には思います。

-実際、研究職になるには、臨床経験年数は影響しますか?

教授:私もそうですが、教員の場合は臨床経験自体は数年です。

情報管理担当も、要は看護部で管理業務の人と仕事をすることになるので、そういった管理業務やデスクワークが元から多かった人も多いかもしれませんが、若く教員になる人の場合は、臨床経験は数年で大学院に行ってしまうというパターンが多いです。

逆に師長職くらいまで経過し、経験が20年くらいあって教員になる方もいるので、そこは好きなコースを選んでいいと思います。

-臨床経験が3年目くらいの看護師でも、大学院に行ってジョブチェンジすることは可能だということですね。

教授:そうです。

今はさすがに臨床経験がほぼゼロという人はいないので、全く経験しないで大学院に行くことは全然お薦めできませんが、数年という人は、私も含めて結構多いので、それはあり得ると思います。

 

 

~大学院の費用や授業の時間はどのようなものか?~『働いたままでも大学院に』

-学費はどれくらいになるのですか?また、働きながら大学院に行くことは可能なのでしょうか?

教授:私は働いたまま、夜間や土曜日を使って大学院に行きました。
看護師の給料の中から年間100万くらいの学費を捻出しましたが、まだ子育てをしておらず、自分に使えるお金だったので、それはできました。
しかし、大学によっては昼に通う大学もあります。
お金をためておいてアルバイトで食いつなぐ感じになり大変だとは思いますが、そのようなパターンもあります。

-働きながら大学院へ行けると経済的に何とかなるけれども、学業だけに専念するとなると、事前の貯えも重要ということですね。

-学費以外に、お金はかかりますか?

教授:研究テーマ次第だとは思いますが、特に看護系の研究をする方は、アンケートやインタビューを使う研究が多いと思うので、そういったコストはかかります。
インタビューにしても、行って話を聞かなければならないし、自分のテーマに合った話を聞くべき相手の方が遠いと遠征しなければならないので、お金がぎりぎりだと研究活動自体は大変だと思います。
インタビューの研究の場合だと、お金を使えるなら、テープ起こしなどは外注してしまえばいいですよね。
例えば1時間話して、1~2万円を払えばテープは起こしてくれるので、自分でしなくてもいいですが、ぎりぎりで大学院生をしていると、自力で起こすことになります。
ですので、お金を使える環境のほうが楽だとは思います。
個人的には、社会人で行けるなら社会人で行ったほうが楽だとは思います。

-ある程度貯金した上で行くと、学生期間もより楽に過ごせるということですね。

教授:もちろんテープ起こし自体も大事な勉強なのかもしれませんが、社会人なので時間効率を上げて勉強すると考えると、そういった時間とお金のバランスは大事だと思います。

 

 

~大学院を目指すにあたり必要なスキル~『文章を書くということと研究職はリンクするような気がします』

-大学院に行って研究職を目指すにあたり、専門的なスキルは必要ですか?特殊な勉強をしておいたほうがいいというようなことはありますか?

教授:現場にいるときと研究職とで大きく違うのは、文章を書く時間が非常に多いことです。
現場にいるときも記録を書いているので、文章を書いていないわけではないのですが、種類が違います。
現場の記録は、目の前に患者さんがいて、その人の様子や何をしたかという事実から始まり、アセスメントをするなどの構造で記録を書いていくと思います。しかし研究職の場合は、既存の資料や元々あるものを組み立てて、自分の頭の中で構成をしてから事実関係を当てはめていくことが多いので、文章を書くことが決定的に嫌いな人が大学の教員になると結構、苦労するかもしれません。

-文章能力がある程度必要で、時間があればそういった勉強をして、文章を書く能力を養っておくと良いということですね。

教授:はい。
論文もそうですが、学校運営の会議資料などのデスクワークも結構あります。
授業資料自体も、文章を書くような構成が頭にあってパワーポイントを作れば、意味が分かる仕上がりになります。
しかし、思い付いた事実関係をバラバラに並べてパワーポイントを作っても訳が分からなくなるので、文章を書くということと研究職はリンクするような気がします。
外部の科研費などの研究費を取るときも作文能力が影響するので、その辺りは非常に大事だと思います。

-文章能力は自分の研究にも非常に影響するということですね。

教授:そうですね。
良い素材を持っていても、それを表現し切れなければ使う機会がなくなってしまうので、もったいないと思います。

-事前に、統計学などの知識は必要ですか?

教授:最低限は要りますが、看護師免許自体を大学で取ってきた人たちは保健統計系の勉強を必ずしているはずなので、その範疇のことがきちんと分かればそれほど困らないと、個人的には思います。
今は統計ソフトが非常に優秀なので、大丈夫だと思います。

-学生の時に学んだ知識があれば、大きな問題にはならないということですね。

-大学院や、研究の現場でも勉強はできるのですか。

教授:それは大丈夫だと思います。
少し大変かもしれないのは、(研究の現場において)30代半ばくらいまでに教員となった場合、看護の大学はあまり講座制ではなかったり、講座でも研究活動まで一緒にしていないケースも結構あったりするので、大学の職場での上席者が研究指導をしてくれるわけではありません。
そこはネックです。
方法としては、30代半ばくらいまでに教員になるという人は助手・助教で採用されるケースが多いと思うので、どこかの博士課程に行きながら、博士の指導教員に教えてもらうという方法はあるかもしれません。

ー30代半ばくらいまでに教員になるという人は、教員として研究を行いながら、他の大学院へ行き、学習も並行して行うことで不足している知識を補いながら研究することがいいかもしれないということですね。

ーありがとうございます。

 

※講座制:教育と研究の双方において必要な専攻分野毎に「講座」を設置し、教育研究に必要な教員を配置する制度である。講座には、教授、准教授、助教の3種の教員を原則としておくものとされている。ただし、講座の種類により特別な事情があるときは、講師を置き、又は准教授若しくは助教を欠くことも認められている。講座は、原則として専任の教授が指導的な立場に就くものとされている。

講座の下に複数の研究室(教室)を置き、複数の教授が所属する場合は大講座制と呼ばれる。一方、一つの研究室(教室)が置かれ、一人の教授が所属する場合を小講座制という。大講座に小講座を所属させる大学・学部等もある。
講座制は旧帝国大学の他創立が古い大学が採用することが多かった。現在は改組されていることが多い。

(引用:Wikipedia 『講座制と学科目制』より)

 

『看護師のキャリアシリーズ ~大学教授に聞きました その弐~』へつづく

 


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