看護師セミナーCaring

看護師のキャリア『大学教授に聞いてみた』その壱


看護師のキャリアには、実にさまざまな道があります。臨床現場で長く活躍するだけでなく、研究職として大学や研究機関に携わる方や、認定資格を取得して専門的なスキルを活かしながら働く方も増えています。

この「看護師のキャリアパスシリーズ」では、実際にそうした道を歩んでいる看護師の方々にインタビューを行い、それぞれの経験や考え方を通じて、キャリアの選択肢の広がりをご紹介していきます。

前回までは、専門看護師として活躍されている方にご登場いただきました。「専門看護師になるにはどのような道のりがあるのか?」「専門看護師として、どのような業務に携わるのか?」といった疑問に対して、具体的かつ実践的な内容をお話しいただきました。

今後も、さまざまな分野で活躍する看護師の姿を通して、自分自身のキャリアを見つめ直すヒントをお届けしていきます。

お話をまだお読みになられていな方は、是非、下記のリンクからどうぞ。

今回からは、看護師のキャリアパスシリーズの第2弾として、研究職の大学教授に看護学校の教員にまつわるお話をお伺いしました。


もくじ

  • 研究職になるまで
  • 研究職になるまでのプロセス
  • 大学院の費用や授業の時間はどのようなものか?
  • 大学院を目指すにあたり必要なスキル

研究職として大学に勤務される方へのインタビュー

今回は、研究職になるまでのプロセスや費用、必要なスキルについて、実際に大学で研究職として勤務されている教授にお話を伺いました。

研究職になるまでのプロセス

研究職への道のりはどのようなものか

教授によると、研究職になるための基本的な条件は大学院卒であることですが、それ以上に「人とのご縁」が大切だと言います。

教授自身は、もともと大学病院で情報管理担当の看護師として働いており、その職場で現在の日本看護協会の会長と出会ったことがきっかけで研究職への誘いを受けました。

選考試験は必ずありますが、多くの場合は人脈やネットワークによる縁が大きな役割を果たしているそうです。

ネットワークやご縁の重要性について

研究職を目指すには、「やりたい仕事」と実際の仕事のミスマッチを避けるためにも、実際に近い距離で話ができる人とのネットワークを築くことが重要だと教授は話します。

このネットワークづくりは、研究職に就いた後も大きな力になるため、友人や同僚を増やしておくことは非常に価値があります。

臨床経験の影響について

教員として研究職に就く場合、臨床経験は必ずしも長くなくてもよいそうです。教授自身も数年の臨床経験の後、大学院に進んでいます。

若い看護師が数年の臨床経験を経て大学院に進み、研究職へジョブチェンジするケースが多い反面、師長クラスの豊富な臨床経験を持って教員になる方もいます。

つまり、臨床経験が3年程度の看護師でも大学院に進むことは十分可能で、自分に合ったキャリアを選べるということです。

大学院の費用や授業の時間について

学費と働きながらの通学

教授は夜間や土曜日の時間を利用して働きながら大学院に通いました。年間の学費はおよそ100万円ほどで、看護師の給与から捻出できる範囲だったそうです。

ただし、昼間に通う大学院もあり、その場合は学費のほか生活費のための貯蓄やアルバイトが必要になることもあります。

働きながら大学院に通うか、学業に専念するかで準備すべき資金の額や生活のスタイルが大きく変わるため、事前の計画が重要です。

学費以外の費用

研究テーマによっては、アンケートやインタビュー調査を行う際の交通費や資料作成費などが発生します。

インタビュー調査の場合、遠方に出向くこともあるため、交通費や宿泊費がかかることも珍しくありません。

さらに、インタビュー内容のテープ起こしを外注する費用も必要になることがあり、1時間あたり1~2万円程度が相場です。

予算が厳しい場合は、自分でテープ起こしをすることになりますが、時間効率を考えるとお金をかけて外注する方が研究に集中しやすいとのことです。

大学院を目指すにあたり必要なスキル

文章を書く能力の重要性

研究職では文章を書く時間が非常に多くなります。現場での記録とは異なり、既存の資料を組み合わせて論理的に構成し、自分の考えを明確に表現する必要があります。

文章を書くことが苦手な人は、大学教員になった際に苦労することが多いそうです。

授業資料の作成や会議資料の準備、論文執筆、さらには研究費申請書類の作成など、文章力はあらゆる場面で求められます。

統計学など専門知識の必要性

統計学の知識は最低限必要ですが、看護師免許を大学で取得した人は保健統計の基礎を学んでいるため、通常は大きな問題にはなりません。

現在は統計ソフトも進化しており、専門的な技術がなくても解析を進められる環境が整っています。

大学院や研究現場でさらに学びながらスキルアップが可能なので、事前の知識に自信がなくても安心してよいでしょう。