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看護師のキャリア『専門看護師に聞いてみた』その参


看護師のキャリアパスは多様化しており、臨床の現場を離れて研究職に就く方や、専門資格を取得してその知識を仕事に活かしている方など、さまざまな道が広がっています。今回はそうした看護師のキャリアパスについて、実際に活躍されている方々のお話を伺い、「看護師のキャリアパスシリーズ」としてご紹介していきます。

これまでのシリーズでは、第1回、第2回と専門看護師の方にお話を伺ってきました。今回がその第3回目となります。専門看護師として働く方々の生の声を通じて、仕事の内容や役割の変化、実際の現場で感じられていることなどをお伝えできればと思います。

今回のインタビューでは、「専門看護師の実際」というテーマで、資格取得後にどのような仕事をされているのか、役割にどのような変化があったのかについて詳しくお話を伺いました。専門看護師としての業務の幅が広がる中で、どのような経験をされているのかがわかる内容となっています。

もし、前回までのインタビューをまだお読みでない方は、ぜひ下記のリンクからご覧ください。これまでの内容もあわせて読むことで、専門看護師の役割やキャリアパスの全体像をより深く理解していただけると思います。


もくじ

  • ―専門看護師になっての変化は?―
  • ―実践だけでなく、倫理的な支援も行うのが専門看護師の役割―
  • ―専門看護師が病棟看護師のパフォーマンスを向上―
  • ―専門看護師になってからの時間について―

専門看護師の実際

引き続き、都内の病院で急性・重症患者看護の分野に従事している専門看護師の方にインタビューを行いました。専門看護師になるためにはどうすればよいのか、専門看護師になることでどのような変化があるのか、また資格取得にはどれくらいの費用がかかるのかといった疑問について、お話を伺いました。

専門看護師になっての変化は?

専門看護師になって感じる変化は主に3つあると考えています。それは「給料」「信頼感」「臨床教員としての役割」です。

給料に関しては、施設によって異なると思います。私の場合は、管理職になったことで給料が増えましたが、専門看護師になったこと自体で給料が上がったわけではありません。

信頼感については、専門看護師の資格を知らない医師もまだ多いですが、資格を得てからは医師からの信頼が格段に向上しました。何か問題が起きたときは、まず最初に相談してもらえる存在になったと感じています。

また、院内のセミナーで講師を務めることもあります。数年前から臨床教員の依頼を受けるようになりましたが、現在はお断りしている状況です。臨床教員は必ずしもやらなければならないものではないため、まずは自分が本当にやりたいことを優先しています。

実践だけでなく、倫理的な支援も行うのが専門看護師の役割

専門看護師の重要な役割の一つに倫理調整があります。専門看護師の教育課程の中には倫理に関する講義が必須で含まれており、私もこの分野をしっかり学ぶ機会に恵まれました。

「シェアード・ディシジョン・メイキング」という概念や倫理調整についての講義では、文献を読み込み、事例発表を行ったことをよく覚えています。

※シェアード・ディシジョン・メイキングとは、患者と医師の双方が医学的な意思決定に参加するプロセスを指します。

院内セミナーでは倫理的な教育部分も担当し、日常の看護ケアの中で根拠が曖昧だったり、倫理的に疑問があるにもかかわらず慣習的に続けられていることに問題提起をしています。各スタッフが問題意識を持ち、自ら考えるきっかけを作ることを大切にしています。

専門看護師が病棟看護師のパフォーマンスを向上させる

以前は看護の質を十分に可視化できていなかったため、看護師自身の達成感や貢献度が見えにくい状況でした。私たち専門看護師が観察やケアの評価尺度を導入し、それに基づく教育を行うことで、看護の成果が明確になり、看護師のモチベーションアップに寄与していると考えています。

また、これまでは経験豊富な先輩看護師の力に頼った人材育成が中心で、システム化は進んでいませんでした。そこで人材育成の仕組みを整え、看護の質を一定のレベルで維持・向上させることに成功しています。

専門看護師になってからの時間の使い方

専門看護師としての活動時間の確保は病院によって異なります。しっかり時間を割り当てている施設もあれば、私の勤務先のようにほとんど確保されていないところもあります。

私の場合は管理職も兼務しているため、その中で時間を調整しながら活動しています。論文執筆や学会発表の準備は主にプライベートの時間を使っています。大学院時代に比べると多少は余裕がありますが、特別に余裕ができたわけではありません。

院内での活動としては、自分が導入したいと思った患者観察用のスケールなどを自ら勉強し、現場に導入する努力をしています。自分の活動が病院にプラスになることを理解し、交渉力を持つことも専門看護師には必要なスキルだと感じています。