看護師セミナー・研修のケアリング facebookページ

看護師のキャリアシリーズ ~移植コーディネーターに聞きました その参~

看護師のキャリアパスについて、臨床から離れ研究職に就かれた方や、資格を取得し仕事に活かされている方などにお話をお聞き、看護師のキャリアパスシリーズとして、紹介させていただきます。

前回に引き続き、臓器移植に携わる、移植コーディネーターの方にお話を伺いました。

 


 

目次
 移植から移植後までの役割 
  ~臓器移植は10年待ちが当たり前
  ~臓器移植の流れ それは突然やってくる
  ~移植後のフォロー~
  ~忘れられないエピソード~
  ~移植コーディネーターの魅力 長期的にかかわること~

  

  


移植コーディネーターの資格をお持ちで、都内の病院に勤務される看護師の方にお話を伺いました。
今回は、移植コーディネーターが移植前から移植後までどのような関わりを持つかなどについてお話を伺いました。

 

―臓器移植は10年待ちが当たり前― 

―移植待ちの患者さんの話を聞きますが、実際は移植されるまで、どの程度の期間がかかるのですか?

腎臓移植の場合は初回の外来で診察を受けてからが長いです。
多くのことを調べますし、手続きもすごく複雑です。
兄弟間や夫婦間で移植をするケースもあるのですが、養子縁組した人から移植をするケースもあります。
養子縁組するケースは時間をじっくりかけて取り組みます。
また先月は、結婚したばかりで移植をしたいというとケースもありましたが、強い違和感を覚えます。
そのようなケースには1年間は待ちましょうという話をして、しっかり婚姻が証明されるように待ちます。
特に腎移植の場合は、透析をすれば待てる状態なので、しっかりと確認を取ります。
また、臓器バンクに登録している人の場合、腎臓でおおよそ13年待ちだと思います。
順番が回ってくるのに10年を超えることは十分にあります。

 

 

―臓器移植の流れ それは突然やってくるー

―移植が実際になされるときというのは、どのように決まるのですか?

脳死は急に起こりますから、医師への連絡も急に来ることがあります。
今、このような患者さんがいるので待機してくださいと言われます。
移植は、1人目の方が移植できない場合には、2番目、3番目の人へ移るため、私達の受け持ち患者さんが登録が〇番目なのでと、準備し、待機します。
また連絡は、夜中でも突然連絡が来ます。
そのため移植件数の多い病院には毎日、電話当番がいるのです。
更に移植コーディネーターの人たちは、深夜でも順番が来ると手続きをするための手配をします。

―突然連絡が来て、何番目に移植できるかわからないということですか。その調整を行うのも移植コーディネーターの役割になるということですね。

ちなみに私が所属する病院では、深夜の移植コーディネーター対応はしていません。
医師にお任せしているので、(移植が)終わった後に病院へ行ったというケースはありました。

 

 

―移植後のフォロー―

―移植後の様子についてお教えください。

臓器移植の場合には免疫抑制剤を一生飲まなければなりません。
合併症がかなり多いので、定期的かつ中長期の診察・フォローが必要です。
そのため、突然、電話番号や住所が変わって連絡が取れないなんてことがあると困るので、移植後は外来を定期的に受診をするように促し、住所変更等があれば教えていただくように説明します。

―外来フォローする期間はどれくらいになるのですか?

移植後のフォローは長い人で10年を超えます。
造血幹細胞移植の場合は、投薬の関係がありますので、3カ月に1回程度で外来フォローします。
移植後、5年間何もなければ治癒したことになりますが、化学療法などを受けているのでフォローアップは必要になります。
移植は退院したら終わりではないので、長く付き合うことになり看護師にとっては醍醐味になります。

―移植前から移植中、その後まで、かなり長い期間で一人の人と付き合っていくことができるのですね。

―外来フォローをする中での生じてくるトラブルなどはありますか?

免疫抑制剤を飲まないことで腎臓を悪くしてしまう人もいます。
また、提供した人が腎臓を悪くしてしまうこともあり、片方の腎臓しかないので人工透析が必要になるケースもありました。
臓器提供する人をフォローすることもあり、夫婦の場合は一緒に来ることもあります。
やはり年に1回は定期検診を受けるように医師は説明していますので、年に1回は予約を取れるように配慮をしています。

―受診間隔の管理もマネジメントの一つとして重要なことなのですね。

 

 

―忘れられないエピソード―

―移植コーディネーターとして働いていて、忘れられないエピソードなどあれば教えてもらえますか?

兄弟間で臓器移植したケースで、臓器提供を受けた方(兄)が手術後の合併症ですぐに亡くなってしまったことがありました。
その際に、臓器提供者(弟)がすごく後悔の念を抱き、なぜこのようなことになってしまったのかと抑うつのような状態になりました。
それはトラブルになったケースなのですが、そのときに自分一人しか移植コーディネーターがいなかったので、相談相手がいませんでした。
私一人で抱え込むまではいかなかったのですが、出口を見いだせなかったことに一番の後悔があります。
臓器提供者は無事に退院されたのですが、臓器提供を受けた方には、奥様やお子さんもいましたので、その人たちとの家族関係を壊してしまったという感じがありました。
亡くなった方は働き盛りのでもあったので、僕(提供者)が移植を言いださなかったら、このようなことにはならなかったという後悔言葉を今でも忘れません。
本当に困難で辛い事例だと思いました。

 

 

―移植コーディネーターの魅力 長期的にかかわることー

―移植コーディネーターとしての魅力とは何でしょうか?

移植は倫理的に難しいことが多くあります。
大変なところではありますが、やりがいを感じる部分もあります。
また、一般的な看護の場面では、部分的にしか関わらないので、継続的にできるという看護師はそんなに多くないと思います。
私が考える看護師として意義は、患者さんと長く付き合い、その人の暮らしとともにあることだと思います。
初回外来の時から知ることができ、入院中から退院時も知り、退院後もフォローするということは長期的に患者に関われます。
そのようなケアができるのも移植コーディネーターの特徴であり、私がコーディネーターになって感じた最大の魅力です。

 

 

今回まで3回に渡り、移植コーディネーターの方にお話を伺ってきました。
ご協力いただきました、看護師の方、本当にありがとうございました。

 

 

バックナンバー

↳看護師のキャリアシリーズ ~移植コーディネーターに聞きました その壱~
↳看護師のキャリアシリーズ ~移植コーディネーターに聞きました その弐~

 


CaringのSNS公式アカウントで、研修会や医療に関わるNewsなどの情報を公開中。