看護師のキャリア 『移植コーディネーターに聞いてみた』その壱
看護師のキャリアパスについて、臨床から離れ研究職に就かれた方や、資格を取得し仕事に活かされている方などにお話をお聞く「看護師のキャリアパス」シリーズ。今回からは、臓器移植に携わる「移植コーディネーター」のお仕事についてご紹介致します。
目次
- 移植コーディネーターは学会認定
- 全国で約100名が移植コーディネーターとして活躍している
- 学会認定を得るためには
- 学会認定を得るための時間とお金
- 臨床経験はどの程度必要か
- 移植コーディネーターの専門コース
- 移植コーディネーターになるための知識
移植コーディネーターの資格を持ち、都内の病院に勤務する看護師の方にお話を伺いました。今回は、移植コーディネーターの資格取得に焦点を当ててお話を伺いました。
移植コーディネーターは学会認定
移植コーディネーターの資格について教えてください。私は臓器の移植コーディネーターの学会認定を持っています。移植コーディネーターは学会認定の資格です。
全国で約100名が移植コーディネーターとして活躍している
全国にはどのくらいの方が移植コーディネーターとして活躍しているのですか? 移植コーディネーターの数は毎年約20名が合格していますので、現在全国で100名強が実際に病院で活躍しています。学会認定は更新制で、資格取得者全員が更新しているわけではなく、更新率は6割から8割と聞いています。
なぜ更新率が6~8割程度になってしまうのでしょうか? 移植コーディネーターは一般の人でもなれますが、看護師がコーディネーターになる場合、看護部や病院の都合があるため、そのまま続けない人もいます。主な理由は人事異動や退職です。同じ部署に勤務し資格を活かせれば良いのですが、難しいことも多いようです。
資格を取得しても組織の都合で活かせないことが影響している可能性があります。
学会認定を得るためには
学会認定を取るために必要なことはありますか? まずは学会員であることが必須です。その後、学会へ定期的に参加し、臓器移植コーディネーターの場合は通称「JATCO」という会があり、そちらの研修に参加します。
研修は3日間で、参加するために学会でポイントを集める必要があります。私の場合は日本看護協会主催の研修に参加しましたが、日本看護協会かJATCOのどちらかの研修に必ず参加しなければ受験資格は得られません。
つまり、まず研修受講のためのポイントを学会で貯めることが入り口となります。その後、経験した移植件数を事前に報告し申請が通れば、マークシート方式の試験を受けます。合格すると次は面接です。面接は厳しく聞かれることはありません。
学会認定を得る流れは、①学会に入会し参加してポイントを貯める、②日本看護協会またはJATCOが主催する3日間の研修を受け、移植件数を事前申請する、③試験(マークシート・面接)を受けて合格する、という流れです。
学会認定を得るための時間と費用
実際に学会認定を得るまでにかかる時間や費用はどれくらいですか? 資格取得にかかる時間は、学会への参加回数を考えると約2年です。費用は交通費も含め総額で20万円ほどかかります。
内訳は、日本看護協会の3日間研修で4万円、学会費、テストが1万円、登録料が2万円程度です。
臨床経験はどの程度必要か
臨床経験について規定はありますか? 移植に関しては3年以上の経験が必要で、テストを受ける際に移植コーディネーターとしての事例提出も求められます。
つまり、移植に関わる部署での3年間の経験と過去に関わった移植事例の報告が必要です。3年目くらいだとまだ早いので、そこから本格的に勉強を始めるイメージです。
臨床経験5~6年目でも試験は可能ですが、その後に実績を積めるかが問題です。学会にはフォローアッププログラムがあり、年1回の研修が更新要件にもなっています。
経験不足を補うフォローアッププログラムがあるのは良いですね。
移植コーディネーターの専門コース
移植コーディネーターのための学校のようなものはありますか? 専門看護師のような学校へ行くことは必須ではありませんが、藤田医科大学大学院が臓器移植コーディネーターのコースを開設しており、専門的に学べます。
また、造血幹細胞移植に関わる血液内科では、がんの専門看護師講義の中に移植コースがあり、選択で学べます。ただし、看護寄りの内容になります。
学校は必須ではありませんが、より深く知識を得たい場合は選択肢になります。まずは学会に参加ししっかり学び、資格要件を満たすことが一般的な流れです。
移植コーディネーターになるための知識
移植コーディネーターになる前に必要な専門知識はありますか? 特殊な知識は必要ありません。移植の研修で哲学や法律も学べるので、仕組みを理解できれば大丈夫です。
研修をしっかり学ぶことが重要です。
『看護師のキャリアシリーズ ~移植コーディネーターに聞きました その弐~』へつづく。