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人工呼吸器の基礎 | 人工呼吸器の準備まで


「人工呼吸器は苦手」という苦手意識を持っている看護師さんは多いのではないでしょうか?
『見る項目はわかるけど、設定されている各項目の意味が分からない』
『換気モードがわからない』
などさまざまな理由から、人工呼吸器に対して苦手意識を持っていませんか??

理解を深め、苦手意識を克服できれば、人工呼吸器は患者さんの呼吸を助けてくれる強い味方になります!

本記事では基本中の基本、人工呼吸器の準備について解説いたします。他にも人工呼吸器に関する記事を公開しておりますので、併せてご覧ください。

より理解しやすい解説として、人工呼吸器に関連するセミナーも多数実施しています。いずれも基礎的な内容をしっかり学べるように工夫していますので、是非ご活用ください。


人工呼吸器の基礎 目次

  1. 人工呼吸器とは
    1. 目的
    2. 適応
    3. 侵襲的陽圧換気(IPPV)と非侵襲的陽圧換気(NPPV)
  2. 気管挿管の準備
    1. 気管チューブの準備
    2. 気管チューブの破損確認
    3. 気管チューブの挿入準備
    4. 喉頭鏡の準備
    5. 気管チューブの挿入
    6. 固定位置(挿入長さ)
    7. X線での気管チューブの固定確認
  3. 人工呼吸器の準備
    1. 電源の準備
    2. 配管・回路の接続
    3. 動作確認

1.人工呼吸器とは? 

人工呼吸器は、次の3点を目的に使われます。

  1. 酸素化の改善
  2. 肺胞換気の改善
  3. 呼吸仕事量の軽減

人工呼吸器の装着が直接的な治療となるわけではなく、原疾患の治癒経過の間、呼吸を補助する目的で使用されます。

1-2.適応 

  • 肺炎や無気肺、肺塞栓、急性呼吸窮迫症候群などによる酸素化の改善
  • 肺炎やCOPD、頚髄損傷などによる肺胞換気の改善
  • 重症肺炎、喘息、COPDなどによる呼吸仕事量の軽減
  • 昏睡や脳機能の障害、薬剤の影響などによる自発呼吸の消失

1-3.侵襲的陽圧換気(IPPV)と非侵襲的陽圧換気(NPPV) 

人工呼吸器には、気管挿管が必要な①侵襲的陽圧換気(IPPV)、②非侵襲的陽圧換気(NPPV)の二つがあります。NPPVに関しては、別の機会に説明させていただくこととして、ここでは、気管挿管を行う侵襲的陽圧換気(IPPV)についてお話しいたします。

侵襲的陽圧換気(IPPV)は、気管挿管を行い人工呼吸器管理を行うため、

  1. 確実な気道確保
  2. 確実な呼吸管理

が行えるようになり、繰り返しになりますが、原疾患の治癒するまでの、

  1. 酸素化の改善
  2. 肺胞換気の改善
  3. 呼吸仕事量の軽減

が望めます。
その反面、侵襲的な処置を行いますので、それに伴う弊害も生じる可能性がああり、次のようなリスクをもっています。

  1. 人工呼吸器関連肺炎(VAP)
  2. 高い圧や換気量による肺障害
  3. 循環動態の変化

そのため、人工呼吸器による弊害を最小限にできるように管理し、最大限のメリットを得られるようにする必要があります。

 

2. 気管挿管の準備

侵襲的陽圧換気(IPPV)では、気道確保が前提となるため、前処置として気管挿管が行われます。
気管挿管を行う際には、患者さんの気道や呼吸状態が悪化している状況です。迅速な気道の確保や人工呼吸器の装着に繋げられるように、前準備をしっかり行っておく必要がありますので、確認しておきましょう。

2-1.気管チューブの準備 

性別や年齢、体形によって使用する気管チューブの太さ、挿入する長さが異なりますが、気管チューブの太さは、

  • 男性:ID 8.0㎜
  • 女性:ID 7.5㎜

が標準的に多く使用されます。

2-2.気管チューブの破損確認

稀にですが、開封した気管チューブのカフに穴が開いており、挿管後、すぐに自然抜管してしまった、十分な換気ができないなどの状態が生じることがあります。
そのため、開封直後に、カフに空気を入れ、破損の有無を確認してから使用するようにしましょう。

2-3.気管チューブの挿入準備

スタイレットを気管チューブが挿入しやすいように適度に湾曲を作り、気管チューブの先端からスタイレットが出ないように注意してください。
気管チューブの先端に触れないようにして、潤滑剤のゼリーをつけて準備しておきます。

2-4.喉頭鏡の準備

ブレードをセットして、ライトが点灯し、明るさが十分であるか確認しましょう。

2-5.気管チューブの挿入

介助者は医師の利き手と反対に喉頭鏡を渡し、医師は喉頭鏡で声門の確認を行ったら、喉頭鏡の位置を保持したまま視線を外さず気管チューブを挿入します。
そのため介助者は、医師の合図で気管チューブを渡し、目標位置まで挿入後、医師の合図でスタイレットを抜去します。

2-6.固定位置(挿入長さ)

固定位置は、口唇に20~22㎝の部分でカフ用シリンジで空気を入れ、固定します。
患者さんが挿管チューブを噛まないようにバイドブロックを挿入します。
バッグバルブマスクを気管チューブに接続し、換気を行います。
医師の耳に聴診器を着け、両肺に空気が入っているか換気を行いながら、両肺の聴診を行い確認します。

必ず両肺の音を聴き、気管チューブが深く挿入されることによる片肺換気になっていないか確認します。
目標の固定の長さが口唇の位置に来るようにして固定します。

2-6.X線での気管チューブの固定確認 

X線上では、気管分岐部上2~4㎝(成人)付近、鎖骨下縁を結ぶ線を1㎝超えた位置に来るように固定をします。
カフ圧は、X線の確認などが済み、落ち着いてからカフ圧計で25㎝H2O前後になるように調整しましょう。

またまれにですが、気管チューブの挿入時に歯牙にカフが接触し、破損することがあります。
注入した空気がすぐに抜けてこないか確認します。

3.人工呼吸器の準備

3-1.電源の準備

人工呼吸器を適切な位置に設置し、停電時に人工呼吸器が停止しないように、無停電コンセントに接続します。

また、緊急時のためにバッグバルブマスクなどでの用手換気と酸素投与が行えるように酸素流量計や酸素チューブなどの物品を準備しておきます。

3-2.配管・回路の接続

中央配管の酸素・圧縮空気にそれぞれ配管を接続し、テスト肺を回路にセットします。
加湿用の滅菌蒸留水を接続し、加湿器の電源を入れます。加湿器を使用しない場合には、人工鼻が接続されているか確認を行います。

3-3.動作確認

回路全体に破損や捻じれがないか確認し、人工呼吸器の主電源を入れ、テスト肺が正常に膨らむか確認を行います。正常に動作確認がされたら、患者さんに接続して呼吸状態の変化を観察します。

人工呼吸器装着直後は呼吸状態の変調もきたしやすく、医師が換気設定の変更も行うので、緊急時に用手的換気が行う可能性があることを念頭に置いておきましょう。


今回は人工呼吸器の準備までをご説明いたしました。
次回からは、換気モードの説明を行なっていきます。

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いずれも基礎的な内容をしっかり学べるように工夫していますので、是非ご活用ください。