引き続き、日本看護協会から第10回「忘れられない看護エピソード」の受賞作品のご紹介です。
今回は一般部門の最優秀賞のお話です。
看護師の立場からではなく、一般の方からの体験のエピソードになります。
献血に来た人のそれまでの背景は知らずにかけた看護師の何気ない一言が影響を及ぼしたお話です。
・最優秀賞(一般部門) 今も元気に出してます
【大阪府松原市】 40歳
あの日を一生忘れません。すごく寒くて、お天気が良くて、そして夕日が本当に綺麗な日でした。ただその前の1カ月ほどは眠れず、食事も採っておらず、心も病んでいました。
私は勤務先の会社でトラブルを起こしてしまい、その日は人事部長と面談することになっていました。会社が関係を別つことを告げるために設けられた会合でした。
とあるホテルでの会合を終え、会社への帰路につきました。社会人としての全てを否定され、経験の浅い私は、存在そのものを否定されてしまったと受け止めてしまいました。状況を受け入れるには経験が少なすぎ、考えは悪い方にしか向かず、家族に対して果たすべき責任の取り方も、自分の命を引き換えにする以外に思い浮かばなくなっていました。
会社がある駅についても会社へは足が向かわず、駅のトイレでは何を 考えても涙が止まりませんでした。
重い足を引きずり、構内を出て、駅前の広場を通ると、献血バスが目に入りました。過去に何度か経験があったため、逃げ込むように献血バスに行きました。
簡単な手続きをして、採血のために利き腕を差し出した際、担当してくれた看護師さんが「とても立派な血管ですねぇ、採血がしやすいです」と褒めてくださいました。私がそんなに採血しやすいですか?と尋ねると「すごい勢いで出ています。濃さもしっかりしていて本当にありがたいですね。こんな血管を持っている人がたくさんいると助かりますね」とまた褒めてくださいました。零れ落ちそうな涙を必死にこらえ、看護師さんに別れを告げ、バスを出ました。
空にはびっくりするほど綺麗な夕日が見えました。
あの時の看護師さん!本当にありがとうございます。あなたが血管と血液を、私の存在を褒めてくださったおかげで、今も元気に生きています。献血は50回を超えましたよ、先日は骨髄バンクドナーとして、骨髄提供もしました。
看護師さん本当にありがとう!あなたは命の恩人です!今も元気に出してますよ!
(引用:日本看護協会HP 第10回「忘れられない看護エピソード」より)
看護師の何気ない一言が、受け手にとっては救いになることもあり、声かけの大切さが感じられるエピソードでした。
CaringのSNS公式アカウントで、研修会や医療に関わるNewsなどの情報を公開中。